マルちゃん 麺づくり 合わせ味噌
//カロリー 351kcal
//食塩相当量 6.1g
昨年末、実家の祖母が亡くなりました。
昭和2年の早生まれでしたから、90歳の大往生だったわけですが、私が生まれた時には64歳。
祖母は専業主婦でしたが、大正14年生まれの祖父は既に定年を迎えていました。2人とも習い事をしたり、趣味に打ち込みながらもいつも家にいました。
特に祖母はシルバーと呼ばれる年代になってから始めた書道を師範格になるほど打ち込みましたから、火曜日と木曜日のお教室の日は祖父は一人でお留守番です。
私はその姿を知りませんが、祖父は昭和の始めから終わりまでを生き抜いたサラリーマンでしたから、専業主婦の祖母が一切の家事を務めておりました。そのため、定年後も台所に立つことはあまりしませんでした。
麺づくりって、他のカップ麺に比べて案外低カロリーなんですね。
祖母が書道に打ち込んでいることを祖父はいつも嬉しそうに話していました。
「始めはダメでも、くじけないで継続すればおばあちゃんみたいに成果が出るから。おばあちゃんは秀でた才能があったわけでも特別でもなんでもない。何歳になっても遅くはないんだよ。おばあちゃんは、それができた。そうだね。おばあちゃんには継続する才能があった。」
祖母が書道教室に行く日は、小鍋にお味噌汁、おむすびと何品かおかずを用意してラップをかけ、おぼんに乗せて食卓に置いて出かけました。祖父はいつも笑顔で見送ります。
カロリーに比例しない高塩分濃度
祖父母の部屋に置いてある飾り棚の中には、お菓子やカップ麺がいつもたくさん入っていました。
「お腹空いていたら食べるといいよ。」
そう、祖母は私たち孫を甘やかしてくれました。
お菓子はいつも湖池屋のすっぱムーチョ。
理由は、祖母が好きだから。
カップ麺は日清のカップヌードルシリーズか、マルちゃん麺づくり。
理由は、祖父が好きだから。
調理時間5分は他のカップ麺に比べても、長めの設定。
「おばあちゃんはね、おじいちゃんのこと大好き!」
祖母はいつも祖父が好きだと惚気ていました。
「おじいちゃんがごはん、足りなかったら困るからね」
飾り棚の中のお菓子やカップ麺は祖母の愛情だったのです。
「おじいちゃんはね、おばあちゃんにいつも感謝しているんだよ。」
祖父はゆっくりとした口調で朗らかに、いつも”ありがとう”を伝えていました。
小袋は三種類。
「いっちゃんも食べるか?」
両親が共働きでしたから、祖父と2人で留守番する休日も多々ありました。
母や、祖母の帰りが待ちきれずに祖父とカップ麺を啜ってしまい怒られる日もありました。
「いっちゃんに食べさせたのは私だから」
祖父は母が怒らないように、悪者になってくれました。
キューブ型にまとまった野菜がなんだか嬉しい
中学生の頃、祖父が亡くなりました。大好きだった祖父の死は私にとってはもちろん、長年連れ添ってきた祖母は悲しみに悲しみました。
「・・・急にぽっかりと胸に穴があいちゃったみたいで、スースーしてしまうんだ。」
祖母はしばらく、そんなことを言っていました。
蓋の上で液体スープを温める。今ではもう、手馴れたもの。
そんな祖母を見兼ねて、当時実家を出て遠くで働いていた兄が、実家の近くに転職をして帰ってきました。普段は口数の少ない兄ですが、そういうところは祖父譲りだなと思います。
あるとき兄は、職場の近くで弱っていた捨て猫を昼休みに実家に運んできました。
「おばあちゃん!猫拾った!!!あとは頼んだよ!!!!」
その猫は「コタロウ」と名付けられ、祖母はたいそうに可愛がりました。
その頃から少しずつ、祖母に笑顔が戻りました。
「まったく、コタロウはいたずらばかりして!」
そんな文句を言いながらも、なんだか嬉しそうな姿を見せてくれました。
スープを混ぜるともう美味しそうとかそういうのなくなっちゃうんだよなぁ・・・
それから数年経ったある日「猫におやつをあげたいから、近所におやつを買いに行く。」と歩いて出かけようとしたところ、祖母は転んでしまいました。
どうにか家の中まで戻ったはいいものの、痛みに耐えきれずその場にしばらくうずくまっていたそう。
仕事が終わり、家に帰ってきた兄は驚き、慌てて病院に連れて行き、祖母はそのまま緊急手術をし、入院しました。
お年寄りは怪我をすると治りが遅い。と、よく言います。
祖母の命に別状はありませんでしたが大腿骨を骨折し、股関節を脱臼する大怪我をしました。人工関節を入れる大手術の後、運動制限がかかり、次第に弱っていきました。穏やかではありましたが、認知も進行しました。
昨年の夏に、朝方突然意識を失い、そのまま4ヶ月も眠り続けた後、この世を後にしました。
麺づくりというだけあって、こだわりを感じるノンフライ太麺。
きっと今頃は、先に旅立った祖父の元でまた惚気ていることでしょう。
懐かしみながら啜った一杯は、昔食べた麺づくりよりも、ほんのちょっぴりしょっぱかったです。
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